「合同会社」と「株式会社」は何が違うのか
こんにちは、横浜戸塚のあおぞら会計事務所の税理士Kです。
間がだいぶ空いてしましました。今回からは、新規に法人を設立する場合によく迷う「合同会社」についてまとめてみたいと思います。新規に法人を設立しようとすると、「株式会社」がいいか「合同会社」がいいかとよく聞かれます。そもそも「合同会社」って何かということで株式会社と比較することで説明したいと思います。
設立手続き
項目 | 合同会社 | 株式会社 |
公証人の定款認証 | 不要 | 必要 |
定款認証料 | ー | 5万円 |
登録免許税(最低課税金額)※1 | 6万円 | 15万円 |
定款貼付の印紙税 ※2 | 4万円 | 4万円 |
※1 税率:資本金の7/1000
※2 電子定款の場合は不要
機関設計・業務執行(法人の役員と運営のこと)
項目 | 合同会社 | 株式会社 |
法人格 | あり | あり |
法人による業務執行社員(取締役)就任 | あり | なし |
社員(取締役)の辞任 | 正当な事由がなければ、辞任できない (定款による別段の定め可能) | 原則的にいつでも可能 (又は、任期満了による退任) |
社員(取締役)の解任 | 正当な事由があり、他の社員の一致により解任できる (定款による別段の定め可能) | 株主総会による普通決議 |
社員(取締役)の任期 | 任期なし | 最長10年 |
計算(法人の会計のこと)
項目 | 合同会社 | 株式会社 |
利益配当 | 可能※2 | 可能 |
300万円の純資産規制 | なし | あり |
損益分配 | あり※1 | なし |
決算公告義務 | なし | あり |
※1 合同会社の貸借対照表上の「純資産額」が社員の「出資財産の総額」を超える額を「利益」、不足する額を「損失」といいます。損益の分配とは、合同会社の事業経営により生じた「利益」または「損失」の額を各社員に分配することをいい、どのような割合で分配されるかは定款で定めることとなります。損益の分配の割合は各社員の出資価額に比例させる必要はありませんが、一部の社員が利益分配を全く受けないとする定款の定めは許されません。損益分配の割合について定款に定めがない場合には、各社員の出資の価額に応じて定められているものとされます。
合同会社の利益は、利益が生じた事業年度に分配しなければならないわけではなく、定款の定めにより利益の全部または一部を留保しておくという方法も認められます。また、損失の分配は、その分だけ各社員の持分が減少するに過ぎず、社員が追加出資をして現実に損失を填補する必要はありません。
※2 利益の配当は、合同会社の内部に留保されている利益のうち、各社員に分配された利益の払い戻しをする行為をいいます。配当額が、配当日における利益額を超える場合にはその利益の配当をすることはできません。なお、合同会社は、利益の配当をする時期、回数、財産の種類・額など、利益の配当に関する事項を定款で定めることができます。
出資(株式)・持分の譲渡・払い戻し(株主と株式のこと)
項目 | 合同会社 | 株式会社 |
信用出資・労務出資 | なし | なし |
社員の責任 | 間接有限責任 | 間接有限責任 |
株式の発行 | なし | あり |
社員の加入 | 総社員の同意が必要(原則)※1 | ー |
持分(株式)譲渡 | 全社員の同意が必要 (定款による別段の定め可能) | 原則自由 |
社員の退社 | 1.任意退社…6か月前までの予告を条件に事業年度末退社 2.法定退社…定款で定めた事由の発生、総社員の同意、死亡などにより退社可能 | ー |
出資の払戻し | 定款を変更してその出資の価額を減少する場合を除いて、不可※2 | 原則的に不可。次の方法による。 1.自己株式の取得 2.資本剰余金の減少による払戻し |
退社による持分の払戻し | 退社時の会社財産の状況に従って、その持分の払戻しが可能※3 | ー |
※1 定款に別段の定めを置いている場合にはこの限りではありません。また、社員加入の効力は、その社員に係る定款を変更したときに発生しますが、出資等の払込完了が条件となります。
※2 定款を変更して出資の価額を減少する場合、社員に対して交付する金銭等の帳簿価額が、出資の払戻しの請求日における剰余金額(出資の払戻しにより資本金を減少する場合には、減少した後の剰余金額)又は定款を変更して出資の価額を減少した額のいずれか少ない額を超える場合には、その出資の払戻しをすることはできません。ここでいう「剰余金額」とは次の①又は②のいずれか少ない金額をいいます。
①「利益剰余金の額」及び「資本剰余金の額」の合計額
②その社員の出資につき資本剰余金に計上されている額
※3 持分の払戻しの場合には、出資の払戻しの場合と異なり、退社する社員に帰属する「損益」(キャピタルゲイン・ロス)も払い戻されます。純資産の部を持分に応じて払い戻すイメージです。なお、持分の払戻しを行う場合には債権者保護手続きが必要となります。
組織再編
項目 | 合同会社 | 株式会社 |
組織再編の制限 | あり※1 | なし |
※1 合同会社には株式移転は認められていません。また、合同会社が株式会社の完全親会社となる株式交換は可能ですが、合同会社が完全子会社となる株式交換は認められません。
解散・清算
項目 | 合同会社 | 株式会社 |
休眠会社のみなし解散制度 | なし | あり |
特別清算 | なし | あり |
合同会社の解散事由としては、総社員の同意による解散や社員が欠けたことによる解散が規定されていますが、株式会社の解散事由と基本的には共通します。(合同会社には特別決議による解散が認められていません。)また、合同会社は特別清算の規定の適用はなく破産手続きによることになります。
登記
項目 | 合同会社 | 株式会社 |
株式に関する事項 | ー | あり |
役員等に関する事項 | ー | あり |
業務執行社員に関する事項 | あり※1 | ー |
役員の重任による役員変更登記 | 不要 | 必要 |
※1 業務執行社員の氏名又は名称、代表社員の氏名又は名称及び住所、代表社員が法人のときはその社員が職務を行うべき者の氏名及び住所
目的・商号・本店及び支店の所在場所・存続期間又は解散事由について定款に定めがあるときはその定め、資本金の額、などの事項については合同会社と株式会社に共通します。
まとめ
いかがでしょうか。合同会社は株式会社と比べて色々な違いがあります。よく合同会社はコストが安いということをいわれますが、それは設立時に登録免許税が安く定款認証が不要であること、役員変更登記が不要であることからきています。また、株式会社は所有と経営が分離していますが、合同会社は所有と経営が基本的には一致しています。そのため、例えば、持分を移転するような場合には株式会社に比べて合同会社は不向きということになるかと思います。ただ、ファミリービジネスのように持分の移転などが考えづらく株主と経営者が一致するようなケースでは合同会社で何ら問題ないということになるます。
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