日経のスポーツ欄記事(2020.8.19)『チーム経営と税務上の恩恵』から思うこと(上)

2020年9月2日

おはようございます。毎日暑い日が続きますがお変わりありませんか。横浜戸塚のあおぞら会計事務所の税理士Kです。

2020.8.19の日経のスポーツ欄に『チーム経営と税務上の恩恵』という記事が載りました。プロ野球のスポンサーに認めれれている一定の税務上の優遇がJリーグなど他のプロスポーツにも適用できるようになったが、そのことがスポーツ界にどのような影響を与えるのかを論じた記事です。お恥ずかしながらこの「税務上の優遇」そのものをよくわかっておらず、今回はこの内容をまとめてみたいと思います。少し長いので2回に分けて掲載したいと思います。

内  容

まずは、内容を確認したいと思います。今回の「税務上の優遇」の内容としては国税庁の文書回答事例『Jリーグの会員クラブに対して支出した広告宣伝費等の税務上の取扱いについて』が該当します。これはJリーグ側から国税庁に対しての照会という形で公表されています。

https://www.nta.go.jp/law/bunshokaito/hojin/080256/index.htm

Jリーグ側が国税庁に照会した内容は以下の3点です。少し長くわかりづらいですが、カットするとさらに分かりづらくなるので原文のまま載せておきます。この内容で取り扱ってよろしいでしょうかとお伺いを立てています。


1 自己の子会社等であるクラブ運営会社に対して支出した広告宣伝費等の取扱い

親会社(直接の親会社だけに限らず、例えば、親会社と同一の企業グループに属する関係会社やスポンサー企業で、当該クラブの事業活動を通じて広告宣伝効果を受けると認められるものを含みます。)が、各事業年度において自己の子会社等であるクラブ運営会社に対して支出した金銭の額のうち、広告宣伝費の性質を有すると認められる部分の金額は、これを支出した事業年度の損金の額に算入される。

2 親会社がクラブ運営会社の欠損金を補てんした場合の取扱い

親会社が、クラブ運営会社の当該事業年度において生じた欠損金(Jリーグに関する事業から生じた欠損金に限ります。)を補填するため支出した金銭の額(既に貸付金等として経理していた金銭の額を含みます。)は、クラブ運営会社の当該事業年度において生じた欠損金額を限度として、特に弊害がない限り、広告宣伝費の性質を有するものとして取り扱われる。

3 親会社がクラブ運営会社に対して行う低利又は無利息による融資の取扱い

親会社が、新型コロナウイルスの感染拡大の影響によりクラブ運営会社の経営が困難となったことに伴い、復旧支援を目的として、相当の期間(通常の営業活動を再開するための復旧過程にある期間をいいます。)内に、当該クラブ運営会社に対して、低利又は無利息による融資を行った場合には、当該融資は正常な取引条件に従って行われたものとして取り扱われる。


1については「クラブのために支出した広告宣伝費は損金でよろしいでしょうか」という内容、2は「クラブがもし赤字の場合、それを補てんしても広告宣伝費として取り扱ってもよいでしょうか」、3は「コロナの影響により経営困難となったクラブに資金融資を行った場合、通常の融資と取り扱ってもよいでしょうか」という内容です。

国税庁側の回答は「ご照会に係る事実関係を前提とする限り、貴見のとおりで差し支えありません。」です。問題ありませんということですね。

照会の内容が回りくどいわかりづらいのですが、おそらく3から上がっていくと理解しやすいと思います。まず、「今回のコロナの影響で経営の苦しいクラブに資金融資を行う」⇒「赤字のためこの資金融資を返済せず赤字の補てんとする」⇒「(赤字の補てんは広告宣伝費なので)広告宣伝費として損金となる」の流れです。これにより親会社はクラブに資金を援助しやすくなるというわけです。

次回はJリーグがこのタイミングで照会した経緯と争点などについてまとめたいと思います。