日経のスポーツ欄記事(2020.8.19)『チーム経営と税務上の恩恵』について思うこと(下)

2020年9月2日

おはようございます!横浜戸塚のあおぞら会計事務所の税理士Kです。

今日は昨日に続き、国税庁文書回答事例『Jリーグの会員クラブに対して支出した広告宣伝費等の税務上の取扱いについて』の解説などを掲載したいと思います。

経緯・争点

まず前提ですが、プロ野球のスポンサーの取り扱いとして、今回の照会と同様の通達があります。それが『職業野球団に対して支出した広告宣伝費等の取扱について』(昭和29年8月10日直法1-147)です。この通達、文章の出だしが「映画、新聞、地方鉄道等の事業を営む法人」となっていて、かなり時代を感じます。今回のJリーグの照会との違いは昨日の上記3「新型コロナウイルスの感染拡大の影響」云々の制約がついているか否かくらいかと思います。今回Jリーグ側は、親会社であるスポンサーの支出の取り扱いについてプロ野球と同じと考えてよろしいでしょうかという照会を行いました。

日経の記事にもありますが、「普通に考えれば、プロ野球とJリーグで扱いが違う方がおかしい」ので、わざわざ今回照会をしたのには疑問が残ります。

この辺の経緯については、『国税庁が「税優遇」新解釈示したJリーグ専務理事のスゴ腕。歴史的回答の全貌を解説する』(https://news.yahoo.co.jp/articles/25430ec0e0cad3f1eddd799bd8d14bd477729726)という記事の中で解説がされていました。

まとめると以下のようになります。そもそも、親会社が赤字の補てん等をした場合に損金算入が認められるのは「広告宣伝費」に該当するためですが、サッカー界はプロリーグを発足時から野球とは明確な違いがあり、「それはチーム名に企業名が入っていないこと」であり、その広告宣伝効果も明らかでないため、税金の考え方として「新たな判断が必要」となり、「水面下でJリーグ側と国税当局のやり取りが行われ、『ユニフォームの胸に企業のロゴを入れる』といった条件で、スポンサー料を損金計上の対象とする方向づけがされた。~略~ プロ野球のような明文化はされていない。」のだそうです。

「ユニフォームの胸に企業のロゴ」をいれていればその会社のスポンサー料は損金計上されるという取り扱いが国税庁とJリーグ側で決まっていたということです。当然、文書としては公開されていません。

そのうえで今回の照会の争点は、スポンサー料の解釈として「もしコロナ問題によって試合数が減った場合、広告価値が減ったと見なされる可能性」があり、「広告宣伝費」に該当しなくなる、または支出額が過大と判断されるかもしれないというものだったとのことです。

この点、今回の国税庁の確認で、「『広告宣伝費扱い』『損金扱い』に関して、試合数減少によるネガティブな影響はない」ことが確認されたということです。これにより、Jリーグ側はプロ野球と同等の取り扱いが認められたということになるそうです。

個人的には今回の照会の文言に「コロナ」の文字がたびたび出てきますので、コロナ禍が去った後にもこの取り扱いが継続するのか不安が残りますが、記事によれば恒久的に、かつすべてのプロスポーツに適用されるものだそうです。もしかしたら水面下でこのような取り決めがあるのかもしれません。

まとめ

今回のプロスポーツのスポンサー料の取り扱いの明確化は、プロ野球に限らずすべてのプロスポーツに適用されるものとされています。その意味ではコロナウイルスの影響で苦しむ様々なスポーツ団体にとっては影響は大きいといえます。

ただ、そもそも今回の取り扱いは「親会社」に関するものなので、日産自動車や楽天などが対象です。わたし達のような地場のサポーターに関するものではありません。日経の記事では「クラブが新たな支援を引き出しやすくなる救済措置はありがたい」が「目指すべき真の姿は、スポーツが自立して稼いで収益をあげることだ。理想を見失わないようにしたい。」と結んでいます。大スポンサーと地場のサポータがスポーツビジネスの両輪なのだということでしょうか。

個人的には地場サポーターにも何か「税務上の恩恵」があってほしいなと思います。