家賃支援給付金の借り上げ寮・社宅の取り扱い

2020年9月2日

こんにちは。横浜戸塚のあおぞら会計事務所の税理士Kです。

今回のテーマも、前回に引き続き家賃補助給付金についてです。今回は迷いやすい借り上げ寮・社宅についてまとめました。

借り上げ寮・社宅の取り扱い

 前回確認にした家賃補助給付金の要件から、この給付金の対象は法人が事業所(事務所や倉庫・駐車場など)を借りている場合と理解ができます。しかし、事業者が社宅や寮を借り、それを従業員や役員に貸し付ける、いわゆる借り上げ社宅・寮の場合は対象となるかという疑問がわきます。特に、法人は給与課税の関係から賃料の1/2程度を本人負担として徴収している場合が多く、転貸しているような外形となり判断に迷います。

 これについて、まず家賃補助給付金の対象となる賃貸借契約の要件について確認します。

  • 2020年3月31日時点で有効なもの
  • 申請日時点で有効なもの
  • 申請日から直前3か月間の賃料の支払いがあること

 次に、対象から除かれる賃貸借契約は以下の通りとなります。

  • 転貸(又は貸し)を目的とするもの
  • 自己取引となるもの(例えば、賃貸人が賃借人たる法人の代表取締役である場合のほか、議決権の過半数を有している場合など)
  • 親族間取引となるもの(例えば、配偶者及び一親等親族間の賃貸契約の場合)

 経産省は、寮・社宅について『家賃支援給付金に関するよくあるお問い合わせ』という公表文書の中で「法人が社宅・寮に用いる物件を賃貸借契約等に基づいて借り上げて従業員を住まわせ、当該物件の賃料を当該法人の確定申告等で地代・家賃として計上しているのであれば、原則として給付対象となります。他方、賃貸借契約に基づいて従業員に転貸している場合は対象外となります。」という見解を示しています。文章の前段で原則として給付対象といい、後段では従業員に転貸している場合は対象外といっており、賃料の1/2程度を本人負担として徴収している寮・社宅の場合は適用できるのかどうか明確ではありません。

 これに対し、日本税理士連合会が7月末ごろに発出した会員向けの資料の中で、「(賃料の1/2程度の本人負担は)『近隣相場:世間並み』の賃料とは考えられず、『賃貸借契約に基づき転貸していると評価』することはできず」、給付金計算の対象となるという見解を出ています。この見解に従えば、例え本人負担分があったとしてもそれが賃料の1/2程度(=世間相場並みの賃料と評価できない)であればこの給付金の対象となると判断できます。この場合、給付金計算の対象となる金額は本人負担額との差額ではなく「支払賃料の総額」が対象となるとされていますので影響は大きいといえます。

 インターネット上の記事などでは、給付金のコールセンターの見解として1円でも賃料を収受していたら対象外という回答があるようです。寮・社宅の賃料を申請に含めるかどうかで給付額に非常に大きな差が出る可能性もあります。一度しか申請できませんので慎重に対応をしたほうがよく、事前に税理士に相談・確認することをおすすめしたいと思います。